薬液注入工法とは?費用・仕組み・向き不向きを一次データで解説
床にビー玉を置くと転がっていく、建具が閉まらない
——そんな違和感を覚えて「薬液注入工法」を調べ始めたものの、業者によって言うことが違い、何を信じればいいか分からなくなっていませんか。

この記事で分かること(3行まとめ)
- ①何をする工法か:私たちの薬液注入工法は地盤にセメント系の薬液(耐久グラウト)を注入して固め、その充填圧を利用して沈下した基礎を持ち上げる工事です
- ②費用目安:薬液注入単体で500万〜800万円程度、工期は3週間〜2ヶ月。ジャッキアップ併用の場合は+200万〜300万円・+2週間が目安です
- ③向いている建物・ケース:ベタ基礎や工場の土間コンクリートの建物、庭・外構を壊さずに済ませたい現場に向いています
私たちの強みは、沈下修正工事に様々な手段を持っていること。
そして着手前に第三者機関が事前調査・工事計画の内容を審査するGS10保証の仕組みにあります。
だからこそ、工法選びの根拠を客観的に示せます。
曳家が行う薬液注入工法——この記事を読んでほしい理由
私たちは曳家、沈下修正工事を手がけている北関東を中心に活動している建設会社です。
実績として過去、重量460t(鉄筋コンクリート造)・延床面積753㎡(木造・有形文化財)・上げ高さ9m(曳家工事)です。薬液注入以外の沈下修正工法——耐圧盤工法・鋼管圧入(アンダーピニング)工法・土台揚げ工法——も、すべて手掛ける沈下修正業者です。
つまり、単一工法しか持たない専門業者にはできない、全工法を横断した比較が可能なことが、私たちの実質的な強みです。言葉だけの「対応できます」ではなく、準備の裏付けとしてご覧いただければと思います。
家の傾きを放置すると何が起きるのか
床のビー玉が転がる、扉が勝手に開閉する、来客時に傾きを気にしてしまう——こうした違和感は、放置していても自然には直りません。
傾いた環境での生活が続くことで、心理的なストレスや不快感を訴える方もいます。ただし、体調と傾きの因果関係を断定するものではありません。
問題は、放置そのものよりも「誤った修正」を選んでしまうことです。東日本大震災の際には、地元の設備業者や総合建設業者が専門業者を通さずに沈下修正を行ったケースが多発しました。その結果、工事から数年で再沈下し、裁判に発展した事例があると報告されています。
施主が再沈下の可能性を理解したうえで、予算の都合から工法を選ぶこと自体は問題ではありません。問題は、再沈下の可能性について一切説明がないまま工事が進むことです。この一点を押さえたうえで、薬液注入工法の中身を見ていきましょう。
薬液注入工法とは何か——仕組みと使用薬液の選び方
薬液注入工法とは、地盤の中に薬液を注入して固化させ、その充填圧によって沈下した基礎を持ち上げる工事です。掘削を伴う耐圧盤工法やアンダーピニング工法と異なり、地中に直接薬液を送り込む点が特徴です。
“`
[地表]
│ 注入管を挿入
▼
[基礎下の地盤]──薬液注入──▶ 固化・充填 ──▶ 充填圧で基礎を押し上げる
“`
薬液には大きく分けて、水ガラス系・樹脂系(ウレタン系)・セメント系(耐久グラウト)の3種類があります。私たちが採用しているのはセメント系の耐久グラウトのみです。
なぜセメント系だけを採用するのか
薬液注入工法と言っても、水ガラス系は、経年とともに薬液が痩せる(脱水する)可能性があります。そのため、多少の再沈下の可能性は否定できません。
一方、耐久グラウトは脱水の影響を受けにくく、水ガラス系より再沈下の可能性を抑えやすいとされています。
ただし、セメントが固まる過程(水和反応)に伴う収縮は必ず起こります。そのため、施工後は数時間から数日の経過観察を必要とします。
もちろん「再沈下しない」とは書きません。「収縮」は起こる、だから経過観察する
——これが、この工法を扱う専門家としての正直な言い方だと考えています。
なお、建物周辺で大規模な液状化現象が起きた場合は、いずれの薬液を使っても再沈下の可能性は残ります。施工業者に求められるのは、「再沈下可能性」誠実な姿勢なのです。
薬液注入が向いている現場・向いていない現場の判定基準
向いている現場
薬液注入工法は、基礎がベタ基礎、または工場の土間コンクリートである現場に向いています。
もう一つの利点は、庭や建物周囲を乱さずに済むことです。耐圧盤工法やアンダーピニング工法は基礎下を掘削するため、庭やアプローチ、カーポートが工事で乱れます。
薬液注入工法であれば、外構を壊さずに済む点が実利として大きいと言えます。
向いていない現場
以下の条件では、薬液注入工法は適さないと判断しています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 調査不能 | 土質・地下水・埋設物構造物・環境の調査が行えない現場 |
| 用途不適合 | 水ガラス系による耐震補強・液状化防止など長期耐久目的(耐久グラウトを除く) |
| 土質不適合 | N値3を超える有機土・粘土・シルト質粘土など、密な粘性土(一般に薬液が浸透しにくいとされます) |
事前調査の4分類
薬液注入工法は「注入できるか」だけでなく、「注入して周りに何を起こすか」まで見なければなりません。
| 調査 | 見る項目 |
|---|---|
| 土質調査 | 土層構成、地盤の締まり具合、粒度組成 |
| 地下水調査 | 透水性、地下水位 |
| 埋設物・構造物調査 | 埋設管、埋設廃棄物、建物構造・現状、沈下量 |
| 環境調査 | 井戸、公共用水域 |
特に環境調査(井戸・公共用水域)は、地盤だけを見る業者からは出てこない視点です。以下のいずれかに該当する場合、当社は薬液注入を中止し他工法へ振り替えます。
- 埋設管や地下構造物へ損傷を与える懸念があるとき
- 埋設廃棄物により期待する耐力が得られないと想定されるとき
- 井戸水・河川・湖沼などへの水質汚染の懸念が大きいとき
- 建物損傷が大きく、精密な管理ができるジャッキアップ沈下修正工事が適していると判断したとき
薬液注入・鋼管圧入・耐圧盤・土台揚げの費用と再沈下リスク比較【表】
沈下修正には複数の工法があり、費用水準も再沈下リスクの考え方も異なります。まず全体像を表で整理します。
| 工法 | 支持層到達 | 費用水準(目安) | 再沈下リスクの傾向 |
|---|---|---|---|
| 鋼管圧入(アンダーピニング) | あり | 最も高い水準 | 支持層に到達するため抑えやすいとされるが、10mを大きく超える圧入では限界がある |
| 薬液注入工法 | なし(充填・固化) | 中程度(500万〜800万円) | 耐久グラウト採用により抑えやすいとされるが、水和収縮の経過観察が必要 |
| 耐圧盤工法 | 部分的 | 中程度 | 地盤条件により差が出る |
| 土台揚げ工法 | なし | 最も安い水準 | 地耐力が不足する場合、相対的にリスクが高いとされる |
アンダーピニング(鋼管圧入)工法の落とし穴
鋼管圧入(アンダーピニング)は、支持層が10mを大きく超える工事は推奨していません。鋼管の先端が礫に当たり杭の鉛直性が狂ったり、建物自重よりも地中の摩擦抵抗が強くなり、支持層に到達する前に建物が上がってしまう可能性があるためです。
この条件下では、薬液注入とジャッキアップを組み合わせた費用が、アンダーピニングの費用を超えることもあります。価格の順位は絶対ではなく、現場条件で入れ替わることもあります。
「最も安い」が意味すること
土台揚げ工法は費用水準として最も安く済みます。
しかし私たち五月女建設が過去に手直しをした事例では、他社が地盤調査を行わないまま土台揚げ工法を選択し、建物の維持に必要な地耐力が不足していたため、工事の約15年後に10cmを超える再沈下が起きていました。
過去の施工箇所を撤去してみると、コンクリートの状態は非常に悪く、鉄筋も配置されていませんでした。最終的に前回工事した部分を撤去し、コンクリート・鉄筋を再設置する工事となりました。
安さそのものが悪いのではありません。地盤調査やそれに基づいた適切な作業方法のという前提を省いたことが、15年後の再工事につながったという事実です。
曳家の技術×薬液注入——布基礎にも対応できる精密施工の仕組み
私たちの強みは、地盤だけでなく上部構造に精通していることです。曳家では建物全体をジャッキで持ち上げるため、応力がどこに集中するか、持ち上げ中に建物がどう挙動するか、どこにクラックが出やすいかを事前に判断する経験を積んできました。
この経験があるからこそ、薬液注入とジャッキアップを組み合わせた精密な沈下修正工事が可能になります。通常、薬液注入工法はベタ基礎向けとされますが、この併用によって布基礎の沈下修正にも対応できます。
施工管理の中身
施工中は、経験ある職人がレベル計測・圧力計測・流量計測を常時実施し、5mm単位で工事を管理します。この3計測はGS10保証の要件ではなく、私たち独自の管理基準です。
もちろん住みながら工事が可能です(既存の給排水に絡まない工事の場合)。大掛かりな掘削を伴わないため、庭やアプローチへの影響も抑えられます。
薬液注入工法の業者選びを誤るとどうなるか——圧力事故と15年後の再沈下事例
薬液注入工法で使用するグラウトポンプは、平米あたり約700t(約6.9MPa、およそ70kgf/cm²)を押し上げる能力を持つとされています。
十分な土質調査に基づく計画がないまま施工すると、この圧力で建物に亀裂が入ったり、計画よりも上げすぎてしまったりする可能性があります。さらに、地盤は周囲とつながっているため、近隣の建物まで上がってしまうこともあり得ます。
この事故が起きるのは、注入圧を上げることでしか建物を動かせない施工方法をとった場合です。私たちはジャッキで建物を持ち上げ、注入は充填に徹する方法もとることができます。
700tの圧力で押すのみか、5mmずつジャッキで上げるか選択肢も——この違いが、施工の安全性を左右します。
前章で紹介した15年後10cm超の再沈下事例も、原因は「地盤調査をしなかった」の一点に特定できます。業者選定では、以下の3点を確認してください。
- きちんとした事前調査(
地盤調査・地下水調査・埋設物および構造物調査・環境調査)を行っているか - 工事経験がきちんとあるか
- 必要な資格や技術を有しているか
地盤調査の費用は5万円程度(スクリューウェイト試験の場合)です。
この5万円を省いた結果として、15年後に10cmを超える再沈下と撤去工事が発生した——この事実は、調査費用の意味を考えるうえで無視できません。
工法を先に決めないでください——無料相談でできること
ここまで見てきたように、薬液注入工法が向くかどうかは、建物の基礎形式・地盤条件・周辺環境によって変わります。
だからこそ、工法を先に決めないでください。
私たちが無料相談でお渡しできるのは以下の内容です。
- 地盤リスクの無料レポート(沈下量調査の結果と地盤リスクの説明)
- 最適な工法の見積書
- 必要であれば、沈下修正工事以外の代替工事のご提案
代替工事の提案も含めているのは、工事の受注ありきで話を進めないためです。相談の流れは、調査が1〜2週間以内、お見積もりが1ヶ月以内が目安です(工事着手は受注状況・審査の進捗により変動します)。
相談・診断のみのご利用でも問題ありません。その場での契約は求めません。所要時間は約60〜90分、墨出しレーザーによるミリ単位の測定を行い、結果は沈下量ヒートマップ図・傾き勾配図などの資料でお渡しします。
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薬液注入工法に関するよくある質問
効果はどのくらい続きますか?
年数としては不明です。ただし、私たちの用いる耐久グラウトは水ガラス系・ウレタン系と比べて経年による収縮が少ないという特徴があり、再沈下の可能性を抑えやすい方法と言えます。分からないことを分からないとお伝えしたうえで、比較優位でお答えするのが私たちの姿勢です。
木造とRC造で違いはありますか?
RC造は単位体積重量が重いため、沈下修正にかかるポンプの圧力がより大きく必要です。一方で、建物の局所にかかる荷重は分散されやすいという面もあります。どちらの構造にも良い面と悪い面があります。
相談から着工までどのくらいかかりますか?
調査はご連絡か頂いてから1〜2週間以内、お見積もりは1ヶ月以内が目安です。
工事着手までの期間は、受注状況や審査の進捗によって変動しますので、個別にお問い合わせください。
| 段階 | 期間 |
|---|---|
| 調査 | 1〜2週間以内 |
| お見積もり | 1ヶ月以内 |
| 工事着手 | 受注状況・審査の進捗により変動。別途問い合わせ |
調査は有料ですか?
沈下量調査・ご相談・リスクレポートのお渡しまでは無料です(北関東の指定範囲内)。地盤調査は有料で、5万円程度(スクリューウェイト試験の場合)が目安です。
工事中も住み続けられますか?
既存の給排水に絡まない工事であれば、住みながらの施工が可能です。騒音・振動の主な原因は発電機であり、工事そのものが必ずしも大きな音を伴うわけではありません。
仮住まいの要否や、工事中の床下・室内への出入りについては、現地調査の結果をもとに個別にご説明します。
薬液注入工法におけるGS10保証と第三者監査——施工業者が消えても保証が続く仕組み
工事を選ぶうえで、施主が本当に恐れているのは工法の失敗そのものより、失敗したときに責任を負う者がいなくなることではないでしょうか。GS10(グラウンドサポートテン)保証は、この不安に対する当社の答えです。
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適用条件
住居専用戸建住宅、住居専用共同住宅、店舗併用住宅(住居部分がある場合)、店舗事務所が対象です。工事施工面積は1000㎡未満、沈下修正工事の完了から1年以内に対象建物の引渡しを行ったものが条件となります。
着手前審査というプロセス
工事着手前に、建物構造・地盤データ・修復計画で考慮したポイント・不同沈下の原因をまとめた地盤判定報告書を作成し、株式会社地盤審査補償事業へ審査を依頼します。施工中は施工管理報告書を提出し、完了後の審査を経て保険契約証明書が発行されます。
「言葉だけの保証」ではなく、第三者機関が着手前の計画内容を確認するというプロセスが、この保証の根拠です。
補償内容
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物の修復費用 | 5,000万円 |
| 地盤の修復費用 | 5,000万円 |
| 仮住居費用 | 200万円 |
| 事故現場保存費用・事故原因究明費用 | 200万円 |
| 訴訟費用 | 1,000万円 |
被保険者は建設業者・地盤業者・株式会社地盤審査補償事業の3者です。施主は保険金を直接受け取る立場ではなく、修復工事という形で保証を受ける建て付けになっています。重要なのは、工事を行った業者がなくなった場合でも、保険責任期間中は地盤審査補償事業が保証を継続するという点です。数年後に再沈下して裁判になったとしても、業者が存在しないために泣き寝入りする、という事態を避けるための仕組みです。
お客様の声
築40年の木造2階建て住宅で沈下修正工事を行ったお客様からは、次のような声をいただいています。
「今までと生活の安定感が違うように感じる。」
「腰のあたりから立っている感覚が変わったのを感じる」
「夕方のだるさが少なくなった」
これはお客様ご自身の言葉としてご紹介するものであり、当社として「傾きを直すと体調が良くなる」と主張するものではありません。
家の傾きが気になる方へ、
代表が直接お答えします

五月女建設 代表取締役 五月女 紀士
日本曳家協会 常任理事・曳家指導士

工事のご依頼が決まっていなくても構いません。
- 相談無料
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お電話でのご相談0289-62-8235
平日 8:00〜17:00
- 明治35年(1902年)創業
- 10年保証 GS10 対応
- 対応エリア:栃木・茨城・群馬・埼玉・福島
引用
薬液注入工法の指針
| 文献 | 発行 |
|---|---|
| 薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針 | 昭和49年 建設省 |
| 耐久グラウト注入工法施工指針 | 一般社団法人日本グラウト協会 |
材料に関する通達・法令
平成12年3月24日 建設省技調発第48号「セメント及びセメント系固化材の地盤改良への使用及び再利用に関する当面の措置について」(六価クロム溶出に関する通達) 希硫酸の規定
- 消防法 第9条の3
- 労働安全衛生法 第88条(労働安全衛生規則 第85条、特定化学物質障害予防規則 第27条ほか)